こんにちは、みやけです。
今回は久々に昭和プロレスの話を書いてみたいと思います。
テーマは全日本プロレスの1980年代前半の開幕戦のマッチメイクです。開幕戦というのは基本的にそのシリーズがどんなテーマで進もうとしているのかファンに明示する必要があります。
必然的に外人側が大暴れし、日本人側が不覚の敗戦、もしくは反則攻撃や乱入でコテンパンにやられるというのがデフォでなのですが、1980年代前半、ちょうど日本テレビの松根さんが社長に就任したあたりから明らかにジャンボ鶴田がエースであることを印象づけるようなマッチメイクが多いのです。
そしてジャパン軍との抗争のさなかに、突如馬場がメインに単独で出てくるシリーズがあるのです。今思えば色々と感ずるところがあるのですが、今回は80年代前半の開幕戦メインカード・結果を一気に羅列して検証してみたいと思います。
なお、「チャンピオンカーニバル」および「世界最強タッグ決定リーグ戦」は除外します。これは企画ものですからちょっとね。。。。後、バトルロイヤルも除外させていただきます。それでは1981年から一気にみてみたいと思います。
・1981年 新春ジャイアントシリーズ
鶴田&●トンガ(11分6秒体固め)○ブッチャー&ルーイン
※いきなり馬場の姿が見当たりません。これは典型的なブッチャー・ルーイン組のお披露目試合ですね。
・エキサイトシリーズ
○馬場&鶴田(2−1 反則絡)●レイス&コックス
・インターチャンピオンシリーズ
インタータッグ戦 △馬場&鶴田(1−1 決勝両リン)△ファンクス
・スーパーパワーシリーズ
鶴田&○スティムボート(2分12秒 エビ固め)シーク&●マグロー
・サマーアクションシリーズ
●馬場&鶴田(2−1 2本目両リン)ロビンソン&○スレーター
ジェット・シンが突如乱入した試合ですね。

・スーパーアイドルシリーズ
○マスカラス(7分52秒)●ジノ・ヘルナンデス
・ジャイアントシリーズ
●馬場&鶴田(12分5秒 体固め)○ブロデイ&スヌーカ
典型的な日本人側がセールした試合ですね。ブロデイスヌーカの初剛体合体ですが、ホーガンの引き抜きに成功していれば、スヌーカではなくホーガンがパートナーだったという噂もあります。
・1982年 新春ジャイアントシリーズ
△馬場&鶴田(9分59秒 両リン)△カマタ&ルーイン
・エキサイトシリーズ
馬場&○鶴田(10分42秒 回転エビ固め)ハンセン&●ロン・ミラー
・サマーアクションシリーズ
鶴田&●井上(14分52秒 体固め)○マスカラス&ドスカラス
・スーパーパワーシリーズ
○鶴田(5分5秒 体固め)●フランク・デユーセック
馬場はNWA総会出席で欠場。鶴田はこのシリーズからバックドロップを必殺技として使用し始めます。
・ジャイアントシリーズ
●馬場&鶴田(8分57秒 リングアウト)○ブロディ&ボルコフ
・1983年 新春ジャイアントシリーズ
○馬場&鶴田(7分37秒 反則)●カマタ&ヘラクレス・ヘルナンデス
・エキサイトシリーズ
●鶴田(19分29秒 リングアウト)○シン
馬場は海外遠征の為欠場。セミではカブキの凱旋試合。

・グランドチャンピオンカーニバルⅠ
馬場&○鶴田(14分4秒 体固め)デビアス&●スミルノフ
同士討ちで負けた為試合後デビアスとスミルノフは仲間割れ。
・グランドチャンピオンカーニバルⅡ
鶴田&●原(13分27秒 体固め)○ブロディ&ボルコフ
天龍より先に原が開幕戦メイン登場!
・グランドチャンピオンカーニバルⅢ
○テリー&鶴田(22分13秒)ニック&●ジェリー・オーツ
・スーパーパワーシリーズ
○鶴田(9分47秒 体固め)●マニー・ヘルナンデス
馬場はNWA総会出席のため不在
・ジャイアントシリーズ
●鶴田&天龍(13分6秒 リングアウト)ブロディ&○ギャング
鶴龍コンビ命名後初試合。天龍初めて開幕戦のメインに登場!
・1984年 新春ジャイアントシリーズ
馬場&鶴田&○天龍(12分21秒 片エビ固め)上田&鶴見&●ジョー
・エキサイトシリーズ
○鶴田(8分52秒 体固め)●スーパーデストロイヤーⅠ
鶴田は蔵前でニックからAWA世界王座奪取!
・グランドチャンピオンカーニバルⅠ
△鶴田&天龍(12分14秒 無効試合)△ハンセン&バス
バグジー・マグロー乱入!

・グランドチャンピオンカーニバルⅡ
○鶴田&天龍(12分31秒 体固め)レイス&●バズ・タイラー
・グランドチャンピオンカーニバルⅢ
鶴田&○天龍(13分4秒 片エビ固め)ハンセン&●ジョニー・マンテル
・スーパーパワシリーズ
○ドリー&鶴田(9分45秒 反則)●ハンセン&ブロデイ
・ジャイアントシリーズ
鶴田&天龍&○カブキ(16分22秒 体固め)ゴディ&ヘイズ&●ロバーツ
翌年からジャパン軍参戦となる訳ですが、ザッと見てみるとスーパーアイドルシリーズでマスカラスがメインを張った以外はジャンボ鶴田がずっと開幕戦のメインに出続けていたのが分かります。鹿みデューセックとかマニーとかデストⅠとかのシングルは単にジャンボの強さを誇示するのが第一目的のマッチメイクに見えます。
日本テレビの松根さんが全日本のテコ入れに関わり出したのは1981年の秋ころからのようですが、既にこの年の頭から鶴田が「実質エース」の状態になっていた気もするのです。
馬場&鶴田の師弟コンビの後半期は「鶴田がひとりで動き回って馬場が美味しいところだけ取っている」と揶揄されがちですが、少なくとも開幕戦のメインでは馬場が負け役に回っている印象であり、83年以降は登場すること自体めっきり減っています。
日本テレビに尻を叩かれるまでもなく、一応は全日側でもシリーズの主役は鶴田に譲りつつあったのではないかと思うのです。それでは1985年以降を続けます。
・1985年 オールスターウォーズ
馬場&○鶴田&カブキ(12分53秒)シン&木村&●鶴見
・エキサイティングウォーズ
馬場&鶴田&●渕(11分4秒 体固め)○ブロディ&ブルックス&ワラス
・スーパーパワーウォーズ
鶴田&●石川(8分8秒 体固め)○ハンセン&バス
・サンダーウォーズ
鶴田&○天龍(10分47秒 体固め)長州&●浜口
そして、実質4年ぶりに通常シリーズの開幕戦で鶴田が開幕戦のメインから外れる得がやってくるのです・
・サマーアクションシリーズ
馬場&●石川(6分48秒 体固め)○ハンセン&ブラックウエル
ご記憶の方も多いかと思いますが、馬場がブラックウエルのお腹でジャンプしたら転んじゃった試合です。すでにこのシリーズの終盤戦の福岡国際センターで馬場がハンセンの挑戦を受けるPWF戦が発表されており、前哨戦としてのマッチメイクに不自然さはないのですが、全日本軍とジャパン軍の抗争が激化する中このカードがメインに入って来るというのは当時大学浪人生の私でも何かこう違和感を感じました。
しかし馬場は翌週、翌々週のテレビ収録大会でもジャンボを従えハンセンとのタッグ戦でメインに登場しました。正直ファンはあまり注目していなかったと思うのですが、マッチメイクは馬場ーハンセンを軸に構成されていたのです。
そしてタイトル戦で馬場は敗れ、その後二度とシングルタイトルに挑戦することもなく、シングルでメインを張る事もありませんでした。後で思い返せばこのシリーズは事実上第一線からリタイアする馬場の”さよならシリーズ”ではなかったかと思うのです。
この2シリーズ後、全日本プロレス中継はゴールデンタイムに復帰し、毎週土曜19時からの放送となりました。その初回収録となった後楽園ホールでのマッチメイクは
・ファンクス 対 ザ・ロードウォリアーズ
・ジャンボ鶴田 対 リック・フレアー
・長州力 対 リック・マーテル
・天龍源一郎&タイガーマスク 対 ミルマスカラス&チャボゲレロ
でした。馬場は全試合の解説を行いましたが、当日試合さえも組まれませんでした。当時頻繁に見られた日本テレビの”プロレスゴールタイム復帰”の番宣ではやたらと全日本のフレッシュさを強調していました。
これはあくまで私の妄想になるのですが、日本テレビはゴルで復帰の条件の一つに「馬場はもう脇役とする事」という項目を提示したような気がしてならないのです。その為のサマーアクションシリーズでの馬場の好待遇だったのではないでしょうか?
もっと言えば、正月のシリーズでは東京体育館でのメインでシンに完勝。夏の武道館のメインでラッシャー木村に完勝しました。まだまだ不完全決着全盛の全日本では珍しい光景でした。全日本プロレス中継のゴールデン復帰はこの年の早い段階から話に出ていましたから、馬場は先手を打って”思い出作り”を行っていたのではないか?という気がしてしょうがないのです。
あくまで私の妄想ですが。。。。
まあ。しかしメインのみならず開幕戦のマッチメイクというものは単にシリーズ最終選の前哨戦という意味合いだけでなく色々な今後のメッセージが含まれがちですよね。上にあげた試合の組み合わせと結果を見るだけでも色々と妄想できて楽しいものですね。昭和プロレスマニアとしては。
今日はこんなところです。今回の資料は「昭和の全日本プロレス」というブログを参考にさせて頂きました。いつも重宝させていただいております。
それでは、また。
#全日本プロレス