こんにちは、みやけです。今回は昭和歌謡がテーマ、歌手の野口五郎さんにスポットをあてて書いてみたいと思います。正直沢田研二さんほど熱心には入れ込みませんでしたが、私は1978年の「愛よ甦れ」から1983年の「過ぎ去れば夢は優しい」まで5年近くにわたってずっとシングルを買い続け、今でもひそかに応援しいる「推し」の一人でもあるのです。
急に野口五郎さんを上げだしたな?と思われる方がいらっしゃるかも知れません。私も五郎さんの人となりについてはそれほど詳しく知っているわけではないので、大ファン面をするつもりはないのですが、それでもずっと見守ってきただけにこのブログでいつか書きたいな、とは思っていました。

ただしかし、私が五郎さんを好きであると理由というのは少し分かりにくいのです。やもすれば「ブログを読んだが、好きだと言っていながら批判・見下してているではないか!」と感じる方がいらっしゃるかも知れません。他のファンの方とはおそらく異なった受け取り方をしているのは事実。でもまあ、それを最初に話しておかないと説得力がない、、、でも最初に好きになったきっかけは、その卓越した歌唱力、そしてあたかもバイオリンの音色のような高音の美声なのです。
きっかけの曲は上にも書きましたように「愛よ甦れ」です。ザ・ベストテンをジュリー目当てに見始めたころ、「この人もまた凄く歌がうまいな~」とつくづく思ったのがきっかけです。西城秀樹さんや郷ひろみさん、山口百恵さん等強者ぞろいの歌手の中でなで私が五郎さんをチョイスしたのか?当時は良く分らなかったのですが、その歌詞の内容の影響が大きいのではないかと思っています。
愛よ甦れ。この曲は1978年2月21日発売、作詞は藤公之介さん、作曲は平尾昌晃さんです。後述しますが、五郎さんの全盛時の曲は「自分の想いを女性に遠慮なしにストレートにぶつけ、その反面女性側の気持ちは汲み取る気配がない、といった男っぽい歌が多いのですが(時代背景が大きな原因でしょうけど)、この曲は歌い手の想いはかなり比喩的に描かれており、非常にふわっとしつつも「少年時代」「飛行船を追いかける」等、やや恋愛とは距離を置き、子供目線に立ち返る、ように聞こえる歌なのです。
更にこの歌の出だしはこれまでの五郎さんの曲のイメージを踏襲し、「愛の慟哭」ともいえる雰囲気のですが、途中からガラッと吹っ切れたような曲調に代わり、「くよくよせずに子供の頃の純粋な気持ちに戻ってやりなおそう」という開放感あふれる流れになるのです。前半がしんみりしているだけにそのインパクトはとても強い。そして当時の五郎さんの曲としてはやや異色の曲。イメージ転換を図ろうとしていたのかもしれません。今聞いてもとてもいい曲です。
子供の頃の私は人見知りが激しく、どうにか自分の内気な性格を変えなければ!という想いが小学校低学年からあったので、そこに共感したのかもしれません。
五郎さんの大ヒット曲である「甘い生活」「私鉄沿線」「針葉樹」等はリアルタイムで聞いてはいなかったのですが、ファンになって聞き直すと「とても雰囲気のあるいい歌だな」と感じました。五郎さんが歌うとその歌唱力で舞台である町や自然の景色が容易に思い浮かぶのです。しかしいい大人になってまたさらに聞き直すと、その歌詞の中身は超男性視点!あまり女性側の気持ちというものは考慮せず!「どうか自分の気持ちを分かってほしい!」「なんでこうしてくれないんだ!」「これだけ僕は君の事を思っているのに!」と押し迫る歌が非常に多いのです。下の動画は名曲「私鉄沿線」、その下に歌詞をUPします。
改札口で君の事、いつも待ったものでした。電車の中から降りてくる君をさがすのが好きでした。悲しみに心閉ざしていたら花屋の花も変わりました。
僕の街でもう一度だけ熱いコーヒー飲みませんか?あの店で聞かれました「君はどうしているのか?」と。
伝言板で君の事僕は書いて帰ります。思い出訪ねもしかして君がこの街に来るようで。僕たちの愛は終わりでしょうか?季節もいつか変わりました。
僕の部屋を訪ねてきてはいつも掃除をしていた君よ。この僕も分かりません。君はどうしているのかと。
買い物の人でにぎわう街にもうじき灯りともるでしょう。僕は今日もひとなみ避けて帰るだけですひとりだけで。この街をこせないまま、君の帰りを待ってます。
このひたすら自分の想いをこれでもかとぶつける感じは正直今の人だと引いてしまうのではないかと思います。五郎さん自身の人柄が、オヤジギャグが大好きな、ちょっと天然っぽい部分もある憎めない方なので、なおの事ギャップがあります。事務所や曲を提供された側は、一見優男で頼りなく見えそうな五郎さんを「情熱の人」にイメージさせたかったのではないかと思います。
他の新御三家のメンバーと比較しても、曲中のキャラは明確にそれぞれ違っていると思うのです。もちろん曲によって歌い手側のキャラは変わるとは思いますが。ちょっと分析してみました。

郷ひろみさんは、「恋愛相手(女性)との関係はすべて対等」の印象があります。そして相手女性の魅力をシンプルな表現で語るスタンスが多いとも思います。更に若い時から歌詞中に英単語を頻繁に盛り込んでいますからノリの部分も大事にしている感じがあります。思い浮かべる曲は「男の子女の子」「誘われてフラメンコ」「バイブレーション」「マイレディー」「ハリウッドスキャンダル」といったところでしょうか?
そして西城秀樹さんは「女性>男性(自分) 」のパターンが多く、つきあっていようがいまいが、自分の想い、自分がどれだけ相手の女性を好きか情熱的に吠える、そんなスタンスの歌が多いと思います。例を挙げれば「炎」←※私はこの曲が一番好き「ブーツを脱いで朝食を」「ブルースカイブルー」「ギャランドウ」「情熱の嵐」「薔薇の鎖」等々
あくまで私の独断ですけどね。しかしこの五郎さんのキャラは、「昭和男の押しつけ」感がだんだん通じなくなりつつあるなか、同様に軌道修正を図っていったのではないかと思います。元々五郎さんが内包する庶民的で、さわやかなキャラクターが自然に印象付けられるように。
そして私自身も「愛を甦れ」でファンになりながらも、なにか自分を変えようとしている五郎さんに一層親近感を持つようになりました。1979年にリリースされた「真夏の夜の夢」はかなりロックテイストな曲なのですが、これをギター弾きながら歌うという試みにチャレンジします。そしてその後に発売された「女になって出直せよ」でもやはりギターを弾きながら歌ったのですが、これがまた実にあっさりというかさわやかな曲で、ひたすら愛情を絶叫していたこれまでの五郎さんのイメージとは大きく異なる曲でした。
「普段着のまま、日常生活の中での愛を語る」そんなPOPなイメージだったんですよ。そして次の曲、五郎さんの曲で私が一番好きな「青春の一冊」です。1979年9月15日にリリースされたシングルで、作詞は伊藤アキラさん、作曲は佐藤寛さんです。残念ながらヒットには結びつがず、ザ・ベストテンでも初のベスト10外となってしまった作品ですが、私としては最もお気に入りの曲です。
読書を恋愛に見立てながら、去って行った恋人への想いを語る、というのですが、未練は残しているものの「戻ってきてほしい」という気持ちは口にしません。そして自分の過去の行動への反省もしています!その分曲のインパクトは若干弱くなっているかも知れないのですが、実に大人っぽく仕上がっているのですよ。
私はそれまでリリースした曲に対して、その歌唱力に感心しつつも「もう少し肩の力を抜いた歌がいいのにな」と思っていました。時代も軽薄な時代に移って行っていましたからね。その流れには残念ながら乗れてはいなかったと思うのですが、いい感じの「大人の五郎ちゃん」の曲に仕上がっていると思います。

そしてその歌唱力も健在!最後の「返せない愛~」の部分の透き通るような高音はそんじょそこらの歌手に歌えるものではないのですよ!
最後に、これに並ぶぶお気に入りの曲を紹介します。コーラスライン!1980年リリースのシングルで作詞は麻生香太郎さん、作曲は東海林修さんです。五郎さんには極めて珍しいみんなで合唱するタイプのノリのいい曲です!
この動画は夜のヒットスタジオでの初公開シーンですが、(何故か?)CMを挟んで他のミュージシャンを巻き込んでの大合唱!曲自体もシンプルで覚えやすく、本来の五郎さんのキャラクターがよく活かされている歌です!
ただし残念ながら売上的には前曲の「愛の証明」を若干上回った程度に終わりました。でもザ・ベストテンには4曲ぶりに9位にランクインしましたね。それでも私にとってはニコニコ微笑みながら歌う五郎さんは魅力的でした。やはりこの人の本質は「いい人」なんだな、つくづく思った次第です。
その後もの五郎さんは「さすらい気分」「裏切り小僧」「氷をゆらす人」「ダイヤル177」と普段の生活の延長線上にあるような軽い感じの路線に変更しました。それらのシングルもずっと買っていましたね。私にとっては肩の力を抜いた五郎さんが非常に魅力的だったのです。そして1983年にリリースした「19:00の街」が久々のヒットになり3年ぶりにザ・ベストテンに登場したのはうれしかったですね。
その後の五郎さんは自分のペースで音楽活動を行うようになりました。流石に私もいろいろな趣味が重なり、その後ずっとシングルを購入し続けるには至らなかったのですが、それでも陰ながら応援しておりました。秀樹さんが亡くなられた時の振る舞いも五郎さんと秀樹さんの関係性を十分感じさせる感動的なものでした。

最近は岩崎宏美さんとのコラボ曲が話題を呼んでいます。たまにバラエティに出ることはあっても、「自分の主軸は音楽である」ことをくずさずに生きてきた五郎さん。まだまだあの高音、歌唱力そしてルックスも健在ですし、これからも活躍を期待したいものです。
今日はこんなところです。それではまた。
#野口五郎