おはようござまいす。
今回はちょっと遡りまして、入院後5日くらいの時の話です。
私は初日目から無菌室の個室に入っていました。
担当医の配慮で、そこは高速を見下ろす南向きの視界の開けた部屋で、通行人を見ているだけでも気分転換になりました。しかし数日暮らしてみるとやや不自由な設計である事に気がつきました。
部屋には私のベッドの右上あたりにコンセントがあるのですが、これがちょっと煩わしいのです。私のカテーテルは左腕についていたので、輸血をする際はどうしても私のお腹の上あたりを管が右から横切る状況になります。
食事をしながらの輸血もありますし目の前で血が流れているのはどうも気持ち悪い。ベッドを半回転刺さればいいのですが、そうだと頭の方に色々機材がセットしてるのでそれはできないのです。
結局、ベッドの左側にコンセントがあり、同じ方向にトイレがある部屋の方が今後生活する上で都合が良かったのです。ある日の午前11頃、たまたま検温チエックに来てくれた看護師さんに「部屋を変わることはできないかな〜」と自分の希望内容を伝えました。正直実現するとは思っていませんでした。
その看護師さんは「ちょっと調べて見ますね」と行って病室を出て行き、30分くらいして戻ってくると「無菌室の◉◉◉号室の患者さんが先ほど退院されました。希望に沿う作りだったら変更の手続きを取りますので部屋を見に来てください。」と言われ見に行くと正に希望の作りだったので変更をお願いしました。
看護師さんは「じゃあ、すぐに移れるよう準備をしますね。」と言って去りました。
私はそれだけでも「凄く仕事の早い看護師さんだな〜」と感心しました。
ところが、昼食を終えた13時過ぎ、その看護師さんがやって来て「手続きおわりましたんで、今日部屋の引越しをしますね。看護師さんの時間が
空く16時頃に6〜7名集まってもらうのでその時間でいいですか?」とのことでした。私は一瞬「マジか!」と思いました。
相当なカルチャーショックでした。他の人からみれば低レベルな話かもしれませんが「仕事ってこんなに早くできるんだ」と頭をハンマーで殴られたような想いでした。
確かこの日は金曜だったと思うのですが、私は勝手にどういう手続きを踏むか逆算して、仮に希望通りの速があったとしても引越しは翌月曜の午後くらいだろうと思っていたからです。
考えて見てもまず担当医への報告・承認、更には部屋に病院食を運んでくれる調理部への報告といつから変更できるかの確認、更には薬剤師・整体師・心理士も担当がいらっしゃって私の部屋に訪れていたので各部署への連絡。そして引越し時の複数名の看護師の確保。
それを考えたら今日で終わるはずがないとたかをくくっていたのです。
まず担当医や看護師さん達が多忙で、なかなか連絡がつきにくいことが分かっていましたし、土日は動いていない部署が多いので、状況の進行が望めません。私が看護師なら今日中に完了させるのはかなり綱渡りの作業なので、おそらく初めっから安全策で月曜に実施することを想定して動き、患者にもそう伝えたのではないかと思います。
しかしはじめに話を聞いてくれた看護師さんは明らかに即対応するつもりで動いていました。
なんなんだ、この差は!と思いました。
引越しも20分くらいで終わりました。「△△さんは、埃を吸い込むといけないので喫茶コーナーで待っておいてください」と言われ私は何もしませんでした。
私は引越し終了後お礼をいうとともに「迅速な対応が本当に素晴らしい!」と拍手交じりに褒めたのですが、彼女達は「常時やっていることをいつも通りやっているだけ」という感じでした。
夕方の食事やお茶もチキンと新しい部屋に運ばれて来ましたし、関係者も全て新しい部屋にやって来ました。完璧な引越しでした。
私は今でこそ休職中ですが、かれこれ25年以上サラリーマン生活をやっております。
お客様となるのは店舗であったり、仕入先であったり様々でしたが、「長年の勘」を悪用して1秒でも早くサービスを提供する、という考えでなく、自分自身が慌てることが無いよう余裕を持った納期・完成日をお客様に伝える事が常態化していたと反省しました。
「顧客ファースト」のふりをして「自分ファースト」だったのです。
もちろんそれで自分をあまり追い込みすぎてはいけないとは思いますが、一度自分ファーストの考えが染み付くと中々元に戻れないものだと思いました。
私は「患者ファースト」の意識が徹底されている彼女達は素晴らしいなと思いました。また、それは病院側の教育があってのものです。
入院中は前にあげたAさん、Bさん、Cさん以外にもたくさんの看護師さん方から励まされ、情報をもらい、世間話にも付き合ってもらいました。
元気を貰いました。
退院する時担当医から入院生活の感想を聞かれ「楽しかった」と私は答えました。
先生は「楽しかったってことはないでしょう」と笑っていましたが、一言で言うとそうなります。苦しいことも多かったですが、関係者全員が私の体調が一刻も早く回復するよう努力していただき、とても気分的に楽しかったのです。そして自分の社会人としての甘さを認識できたのはいい経験でしたし、皆さんから優しくしてもらったのが治療がいい方向に向かったと私はずっと思っているので。。。
今日はこんなところです。
それではまた。