私の骨髄移植⑨ 移植入院直前でドナーさんキャンセル 涙のクリスマス&Happy new year  

こんにちは、みやけです。今回は私の骨髄移植体験記の9回目です。

1年前の2016年末に骨髄異形成症候群の診断を受け、その後あれよあれよという間に症状は悪化、化学治療を行った後、骨髄移植を待つ生活が始まりました。ビザーダ治療が効くか?効かないか?を確認する意味が強い検査入院を乗り越えてからは様態も安定しやや平穏な日々が始まりました。

ビザーダ注射を行うと数週間で効き目が表れるという理想的な展開。下の資料が2か月間の数値ですが、上下を繰り返しながらもそれなり「低値安定」という感じです。クールな担当医のN先生も「良く効いていますね。」と安心した表情で診察していました。

そしてその間、骨髄移植のドナーさん選考についても実に順調に進行していました骨髄バンクに登録しているHLAの型が私と完全一致の方さんでかつ、私の体重等を考慮し更に再選択した方は計17人。その中から担当医を中心とした病院の先生たちが、私のカルテを基に最適と思われるドナーさんを17人の中から1人に絞ります。

そして、同時に後4人、その人が何らかの理由にダメになった事を想定し、やはり同様に検査や説明を進行するのです。そして最終的に選択された方、仮にAさんとします、Aさんは移植ドナーは未経験ですが具体的な施術の内容説明にも同意、契約も完了し、一回目の健康診断も終了。移植を待つのみとなっていたのです。

こう書くと2~3行で終わってしまうのですが、その期間は2ヶ月位だったと記憶しています。そうして当時の私はその知らせを「ああ、そうなんだ」と軽い気持ちで聞いていました。今思えばこんなありがたい話をよく平然と聞いていたと思いますが、無知ゆえの愚かさでした。

そして第二候補とされた方も、健康診断まで完了したが、Aさんがドナーになることがほぼ確定したためその進行をいったん保留している、との事でした。とにかくあまりにも順調すぎました。その間私は会社にその状況を説明し、年明けぐらいに移植手術が行われるので休職の打診を人事総務に行いました。

私の会社の休職の規則としては「社長が申請を承認すれば最大1年まで可能。しかし産業医の診断を受け1年以内に復職できなければ解雇になる。」というものです。まあ、中小企業ですので普通な取り決めですね。申請期間について上司と相談しましたが「退院してもすぐに復職できないのなら1年で申請して、戻ってこれそうになったら前倒しで早めに産業医の診断を受ければいい」という事になりました。

人事部長への根回しも済んだので、1年間の休職申請の用紙に必要事項を記入し、あとは提出するだけになっていました。自身の業務はいずれ私が長期の休みに入る事を想定し既に全く緊急性の無い軽作業中心でしたので、引継ぎは1日あればOKな状態でした。

その間私は、入院中に読む本を探しにブックオフを巡って回ったり、「移植するとしばらく動物に触れないから」という事で猫カフェに入り浸ったり、極めてのんきな生活を送っていました。体調も別に悪くなかったし、血液の数値もそれなりに安定していたので、一時の検査の都度数値が落ちる恐怖から解放され、ホッとしていたのも事実です。

そして、移植手術は年明け2018年の1月●日に決定しました。正月過ぎすぐに入院との事です。そして最後の定期健診が12月21日の木曜、一応それが終え会社には12月27日(水)まで勤務して休職に入る予定でした。しかし私はなぜか12月21日まで休職申請を提出していませんでした。根回しは終わっていたとはいえ、何故そんなギリギリまで提出しなかったのか未だによく分かりません。

21日当日は予定通り朝9時に病院に入りました、血液検査を終わると何故か直ぐ病室に呼ばれました。検査の結果が出るには最低でも45分くらいかかるので、何かを私に急いで伝えなければならない事態が発生したのだなと思いました。直ぐに私の番号が呼ばれ病室に入ると担当のN先生ではなく、その上司のC先生(今の私の担当医)も私を持っていました、何事か?と思いましたね。

挨拶も早々、先にC先生が言葉を発しました。曰く

「●●さん、大変申し訳ないのですが、年明けの移植手術は取り消しになりました。」

と、そう言葉を発したのです。私はその手の話だろうと直感的に思っていたので「延期ということですか?」と聞いたのですが「いえ、延期ではなく取り消しです。そのドナーさんからは移植が不可能になりました。」との回答。これは衝撃でしたね。

よくよく説明を聞くとドナーのAさんは、移植に関しては完全に理解しており、問題は無かったのですが、最終の精密検査で心臓に大きな欠陥がみつかり、AさんはAさんでこれから治療に入らねばならなくなったらしいのです。

それを聞くと、私としてはショックながらも受け入れざるを得ません。いや、Aさんについては「ドナーを承諾してくれて有難かった。無事であればいいな。」と思いましたし、今でもその気持ちに変わりはありません。

どちらにしても、計2回の健康診断で何らかの内科的疾患が見つかった人は移植のドナーにはなれなくなるので自動的に外されたという訳です。私は崩れそうになりながらも、当然思い浮かぶ点について聞きました。「それでは、Aさんは完全にキャンセル、第二候補の方で急ぎで準備に入る、という事になる訳ですね。」それに対しC先生は「いや、申し訳ないのですが、その方も契約がうまくまとまらず既に”脱落しています。

この”脱落”という何とも言えない表現、後から何度も聞くことになります。2度目の衝撃です。流石に私も感情的になり「どうしてその事が分かった時点で言ってくれなかったのですか?」と食ってかかりました。先生は「いや、申し訳ない」と返すだけでした。結局その理由は未だ分かりません。

もちろん、私自身その事は最初の情報を聞いて以降確認していませんでしたし、そもそもドナーさんについて、病院側は骨髄バンクからの情報を伝えるだけなので、責任を問われる筋合いはないのです。そして当時の私は「骨髄バンクに登録しているのだから、その人たちは皆移植に協力してくれるだろう。」というおごった気持ちが間違いなくありました。

高ぶる気持ちを押し殺し「それでは、確保されていた3,4,5人目の候補の方の準備を始めるという事でですね。」と聞くと、「いえ、その方たちも打診の段階で脱落しています。」これには本当に参りました。正に目の前が真っ暗になりました。

私の人生において、今でのそのそのシーンが思い浮かぶショックを受けた場面は沢山あります。1浪しての大学受験で1勝8敗に惨状に終わった時授業をさぼりまくって大学の留年が決定した時、ブラインドメーカーに就職し、3階建ての生命保険会社のビルのブラインド取り換え交換工事で全ブラインド約100台の材質を間違えて発注した時が判明した時不摂生を重ね糖尿病と診断された時、、、いくつかの思い出が胸の中をよぎります。。。

しかしこの時のようにバッドニュースが3度も4度も連打で受けた記憶はありません。結果何もなくなり白紙となったのです。さすがにこれは私も横にいた妻も絶句するしかありませんでした。よく錯乱状態にならなかったものです。

ただし、こう書いてきましたが。骨髄バンクに登録していてそれが実現に至らないケースは決して珍しい事ではないようです。この話は追々詳しく書いていきたいと思いますが、最初の登録の時点では単純に善意、人の役に立ちたい、と考えながらもいざ候補にに上がって、移植の際は何日も拘束が必要になると初めて分かる訳です。

もちろん仕事や家事・育児等もあるでしょうし、家族の反対にあう事も稀ではないとか、、後日この「5人全滅」の話を先生とした時に「普通にある事ですね」と言われてしまいました。目の前が真っ暗になりながらも心を落ち着かせ、今後の流れについての説明を受けました。

まず、HLAの型が私と完全一致のバンク登録者さんは残り12人なので、早急に5人をリストアップし、その中で最有力候補を1人に絞り最優先で事を進めていく、、という前と同じことを行う訳です。これまでそれにかかった時間は2ヶ月強だったので、どんなにうまくいったとしても、骨髄移植手術が実現するのは来年4月頃ではないか?私はそう思いました。

その見立てをC先生に話したのですが、先生は「う~ん。。。」とうなっただけで返事をしてくれませんでした。とりあえず、私の母親、そして会社にその事を伝える必要があります。母には診察が終ったあとそのまま実家に走りその事を説明しました。

会社には翌日出社後すぐに上司に説明を行いました。骨髄バンクの話になってくると実に説明が難しいので詳しい事は省略せざるを得ず、「移植がドナーさんの都合で取り消しになった。再実施は早くて4か月先。申し訳ないが再度今までの勤務を続け、移植が決まれば改めて休職申請を出したい」という内容の説明をしました。

幸いにもまだ休職申請を出していなかったので、会社へは口頭の説明だけで済み、承諾を得ました。もしこれが申請を提出し社長印を貰い控えが返っていたらまた面倒くさいことになっていたと思います。何度もこの説明を幾多の社員にしなければならなかったでしょう。たまたま申請が未提出だったことが功を奏しました。

しかし、しかし、しかし、今思い出してもあの日は忘れる事が出来ません。病院内もクリスマスムードになっていたので、とんだクリスマスプレゼントだなとつくづく思いました。いや、そんな軽い気持ちではなく絶望感で叫びたくなるのを懸命に押しとどめている感じでした。

統計的にクリスマス時は全世界最も自殺が多い期間だそうです。自身が辛い状況にある場合、周囲の浮かれた状況が目に入っているとますます自分が追い込まれるからだそうです。流石に私はそういう気持ちにまではならなかったですが、実に惨めな気持ちでした。

それでも年内勤務中は年度末ということでバタバタしていたのでジックリ振り返る事も無かったのですが、直ぐに年末年始休みに入り今の状況を見つめ直すと、「実は相当マズイ状況になっているのでは?」という不安が押し迫ってきました。

1/3のの登録者さんがあっという間にダメになってしまったのだから、残り2/3の人たちも直ぐに同じようになってしまうのでは?という。。。そもそも骨髄バンクという善意で成り立っているシステムについて、単純に計算式的に考えてはいけないとう事が何となく見えてきました。

移植が実現するまでビダーザ治療を続けるのでしょうけど、医療費は高額療養費限度額精度を使っても月7~8万支払っていますからそうそう続けられものではありません。そして完全合致の該当する登録者さんが居なくなったらいったいどうなるのか?正月休み期間中悩みに悩みました。そして次の骨髄バンク登録者さんの途中経過を聞くのが待ち遠しくもあり怖くもありました。

今日はこんなところです。それでは、また。

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