こんにちは、みやけです。今回は昭和歌謡曲について書いてみました。キャンディーズの(事実上)ラストシングル「微笑がえし」について考えてみたいと思います。
このブログでキャンディーズの事を取り上げるのは初めてです。しかし1970年代後半の歌謡曲マニアの私にとってはキャンディーズもまた当時から大好きな歌手の一人でした。私は1967年生まれなので世代的に言えばピンクレディが当てはまるわけなのですが、当時から彼女達の事はあまり良く思っていませんでしたね。
もちろん、今ではそんなことはないのですが、歌詞の内容が子供ながらに「男をバカにしている」と感じたのと、2人の顔が少しキツめだったこと、そして一番大きな理由は1978年のレコード大賞をジュリーから強奪したことです!(ファンの方がおられたらすいません。。。)
ただしキャンディーズについてもそれほど熱狂的だったわけではなく、内容を把握していないシングル曲も結構あります。ですので大ファン面をするつもりはないのです。でも清潔感があって、元気がもらえる女の子だなあ、と当時も今も常々思っていました。
また例えに出して申し訳ないですが、ピンクレディについてはあの独特の非現実的な世界観に強引に引き込む感じがあるのですが、キャンディーズについては歌の歌詞がいかにもあの当時の女の子が考えそうな内容であり、それがまた良かったんですね。
そして(事実上)シングルラスト曲の「微笑がえし」。1978年2月25日にリリースされ、作詞は阿木燿子さん、作曲は穂口雄右さん。オリコン最高位1位(キャンディーズのオリコン1位獲得はこれが初。ザ・ベストテン最高位1位(年間ベストテン2位)という素晴らしい実績を残しました。
そしてこの曲の素晴らしいところは、作詞をされた阿木さんのはからいで詞の中に彼女たちのヒット曲のタイトルが上手い事散りばめられているのですね。下に歌詞を文字起こししているのですが、引用されているシングル曲の項は太字にしてリンクを貼り、クリックするとwikipediaに飛ぶようにしてみました。
春一番が掃除したてのサッシの窓に、ほこりの渦を踊らせてます。
机 本箱 運び出された荷物のあとは、畳の色がそこだけ若いわ。
お引っ越しのお祝い返しも済まないうちに またですね
罠にかかったうさぎみたい。いやだわ あなた すすだらけ。おかしくって 涙が出そう。
ワンツースリー! あの三叉路で、ワンツースリー! 軽く手を振り私達 お別れなんですよ。
タンスの陰で、心細げに迷い子になったハートのエースが出てきましたよ。
おかしなものね忘れたころに見つかるなんて。まるで青春の想い出そのもの。
お引っ越しのお祝い返しも今度は二人 、別々ね。
何年たっても年下の人。いやだわ シャツで 顔拭いて。おかしくって 涙が出そう。
イチニサン! 3ツ数えてイチニサン! 見つめ合ったら私達 お別れなんですね。
お引っ越しのお祝い返しは微笑にして届けます。
やさしい悪魔と住みなれた部屋。それでは 鍵が サカサマよおかしくって 涙が出そう。
アンドゥトロワ! 三歩目からはアンドゥトロワ! それぞれの道
私達 歩いて行くんですね。歩いて行くんですね。
本当に上手い事タイトルを入れ込んでいるものだと思いますが、歌詞全体も季節の変わり目の男女の別れ、という設定でありながらも、暗に彼女達とファン、そして彼女達お互い自身との思い出を振り返り辛い気持ちを共有する、という非情に深い歌詞になっていると思います。
「男女が分かれる事になった為同棲していた我が家から引っ越す」というシチュエーションは正にファンと彼女達の別れを意味しますよね。ただし歌の全体のイメージが暗くならない様主人公の語りがコミカルであるのは、彼女たちのこれまで有して生きた「元気な女の子」というキャラクターを最後まで貫こうという意思が見える気がします。
「おかしくって 涙が出そう」という言葉が繰り返されるのは、それが歌詞の中では笑い涙でありながらも、彼女たちの悲しさを控えめに表現している気がします。歌手活動のみならず「全員集合」や「見ごろ食べごろ」等のバラエティ番組でも全力で取り組み、アイドルでありながらもハゲヅラを被るのも普通にこなして明るいキャラクターを貫通してきたのだな、と思います。
最後の「見つめ合ったら私達 お別れなんですね。」というの本当に泣かせる表現であり、その見つめあうのが誰かというと、3人お互いであったり、ファンであったり如何様にもとれる表現だと思います。かつてのヒット曲の名前が走馬灯のように頭の中でグルグル回る中で、思い出を振り返りつつ、「お別れ」とはっきり述べることでけじめをつけようとしているように見えます。
もうひとつキャンディーズの歌について言わせていただくと、声の質が皆かなり似ているのが個性だと思います。また例に出して申し訳ないですが、ピンクレディの二人は明らかにそれぞれの字声の高低差がはっきりしていますし、チャゲ&飛鳥とかコブクロとか、、デュオは2人の声質がかなり違っている事を個性のひとつにしているのではないかと思います。
しかしキャンディーズは歌をよくよく聞かないとなかなか3人それぞれの声を聞き分け辛い!この点が逆に3人の結束感というものを自然に表現する結果になったのではないかと思います。
そして彼女たちは「普通の女の子に戻りたい!」と発言し解散する訳ですが、その後安易に再結成などという事は行わず、3人それぞれの道を進まれたのも好感が持てます。ス―ちゃんがまさかあんなことになるとは思いませんでしたが、ランちゃんが未だ大変お元気に芸能活動を続けられているのはうれしく思います。
先頭にも書いたように私は物凄いキャンディーズファンという訳ではないのに、この「微笑がえし」を聴くと必ず涙がこみあげてきて心がグッと来るのです。なぜだろう?といつも思います。むしろリアルタイムで聴いていた頃はそうでもなかったのに。
思うに彼女たちが本当にこの歌でキャンディーズを完結させた事を暗に感じるからではないかと思います。明るいイメージを保ったまま全力で駆け抜け、そして別々になった後もこのイメージを壊さない人生を歩んだ彼女たちの生き様に誠実さを感じられるからかなあ、と思うのです。
清純派で売って長く表現者の仕事を続けていくと、必ずと言っていいほどスキャンダルに見舞われるものです。特に女性タレントは低迷期が続くと色々と自信を切り売りしてしまうパターンを山ほど見てきました。
でもキャンディーズはそんなことはまるでなかったし、ランちゃんが未だあの時のイメージのままでいてくれるのは実に素晴らしいことだな、とつくづく思うのです。キャンディーズの熱狂的なファンが未だたくさんおられるのもそのあたりが理由なのかな?と思ったりもします。
今回はこんなところです。それでは、また。