さらば!山さん 露口茂さん逝去

こんにちは、みやけです。

俳優・声優として主に昭和期後半に活躍された露口茂さんが今年の4月に老衰で亡くなられていたとの事です。もう30年近く芸能の仕事は受けておらず事実上引退状態であったようです。享年93歳。非常に残念なニュースでしたね。

露口さんの代表作と言えば「太陽にほえろ!」の山村精一、通称”山さん”の刑事役、私は毎週金曜はワールドプロレスリングをチラ見しつつも結構太陽にほえろも見ていました。特にボン刑事(宮内淳さん)が活躍していた頃ですね。

刑事の中でも、山さんの存在感は異質であり、私自身はあまり俳優としてのバックボーンを知らなかった山さんは一番好きな存在でした。「ボス」はどこからどう見ても石原裕次郎でしたし、意外とセリフは少なかったからですねえ。。。

山さんは番組の終盤で犯人、もしくは被害者の心情について鋭く洞察する事でその回の事件の全貌を解き明かすことが多く、番組のキーマンであったと思います。しかし私は露口さんの俳優としての仕事に就いてそれほど深い知識があった訳ではありません。

私が思い入れが深いのは、イギリスのテレビドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」においてジェレミー・ブレット演ずるホームズの吹き替えを担当し、シャーロキアンがイメージするホームズ像を実に完璧に表現された事なのです。

このブログではあまり書く機会が無いのですが、私は結構なホームズファンであり、一時国内のホームズファンクラブに所属していたこともあります。これまで数多く作成されているホームズ作品についても結構マイナーなものまで見ています。

その中でもジェレミー・ブレッド版のホームズはその再現度は秀逸!オリジナルの展開もない事もないのですが、ホームズの世界観はほぼ完璧に表現していると思いますし、幾多のホームズファンもその思いなのは間違いないです!

そう少し話させていただくと、、、2010年にから計4シーズン作成された、SHERLOCK(シャーロック)も非常に楽しめた!「ホームズが現代に蘇り。スマホ・SNS等を駆使して活躍する」という、やもすれば陳腐な内容に陥りがちな設定ですが、それが実に上手い事描かれています。

惜しむらくは主役のベネディクト・カンバーバッチマーティ・フリードマンが今作品出演後あまりに有名になり過ぎたため次のシーズンの作成が中々進まず自然消滅みたいな状況になっているのが実に惜しいですね。

更には2012年から作成された「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」もそれに劣らず良い!主演はジョニー・ミラー、ワトソン役は女性のルーシー・リュウです。男女コンビという一見トリッキーな設定ですが、これもまたホームズのイカれた性格の側面をカンバーバッチ以上に表現されており大変な名作ですね。

この作品で面白いのは、ホームズの女性感もあるのですが、それプラス話の中で微妙にまぶされる「アメリカ」と「イギリス」が双方お互いをどう思っているか?という事ですね。現実社会においても両国は決定的な諍いが起こっているわけではないので、その”対立”が表目化されることはあまりありません。

しかし、元々は「兄弟」である両国が文化面、例えば野球等で全く背を向け合っているのは実に興味深い。私に言わせれば双方小馬鹿にしあっているんですよ!華やかな作品ではないですが、実に奥深いんですよね。

日本の作品で行くと2019年にフジテレビで放送されていた「シャーロック アントールドストーリーズ」も面白かったですね!ホームズにはディーン・フジオカを起用、ワトソン役は岩田剛典さんでした。舞台は日本。「ホームズの作品中にちらりと出てくる”未発表作品”を再現するという設定でしたが、これもまたスタッフの中に相当なホームズマニアがいるなあ、感じましたね。

特にディーン様については、日本の俳優でホームズ役をやれるのは彼しかいない!という感じでした。あの不遜な雰囲気は日本人がやるとどうしても違和感があるんですよ!あの独特のキャラはディーン様にしかできないですね。

ガンちゃんのワトソン役も良かったですが、番組中「実は悪の組織のスパイなのでは?」と再三思わせる佐々木蔵之介の怪演も素晴らしかったです。

申し訳ないですが、ホームズの話を続けさせていただくと、、、私はホームズのどこが好きなのか?というテーマを語らせてもらいます。もちろんその卓越した推理力という点も大きいのですが、自尊心が非常に強い人嫌いの変人という性格の傍ら、意外と周囲から賞賛されるのも大好き、という虚栄心の強さ、そのあたりが私の性格とかなり似ているからなのです。

しかもその賞賛は、適当な相槌ではなく、こちらが考えている理屈を完全に理解したうえでのそれでないと納得しない、という相当に扱いづらい性格なのですよ!それはそうとそういう私がホームズ物語の中で一番好きな場面、、、、それは名作「まだらの紐」の中の描写です。

これはジェレミー・ブレット版でも大変原作を忠実に再現されているのです。経過はこういう事です。依頼人は若い女性でイギリスの片田舎ホーシャムから早朝突然訪れます。彼女は自身の周囲に再三気味の悪い現象が起こっているのでホームズにその原因の調査を依頼し、ホームズはそれを受諾します。

しかし、依頼女性が退出後、大柄の中年男性がワトソン夫人の制止を振り切ってホームズの部屋に殴りこみます。

中年男性は依頼者の義理の父だと名乗り、自身の家の問題なので依頼を受けないように脅かしますがホームズは「今年はイギリス国内の麦の成長は順調らしい」等と全く関係ない話を持ち出し、はぐらかします。

すると中年男性はホームズを「嗅ぎまわり屋」「スコットランドヤードの手先」と罵り、「儂は敵に回すと怖い男だぞ」と部屋の暖炉の傍に合った火掻き棒を拾いあげます。

身構える2人。しかし中年男性はその火掻き棒を両手で持ちLの字にへし曲げ、それを放り投げて部屋から去っていくのです。  

しかしホームズは全く動揺することなく、「僕を警察の一味と思っているなんて実に可愛い男だねえ」といい捨ててあった火掻き棒を拾いあげます。

そして「もう少し長くいてくれたら僕も腕力ならあの男にそう負けるものではない事を見せて上げれたのにねえ」と呟き、火掻き棒の両端をもって一瞬だけ力を入れ元の形に戻してしまうのです。

そしてホームズは何事もなかったように火掻き棒を暖炉に戻し、今後の方針についてワトソンに話し始めるのです。イヤイヤ!なんと魅力的なシーンでしょうか!(笑)

これ見よがしに「俺はあの男に負けないんだぞ!」というのを見せつけるのは子供っぽい行動ではあるのですが、ホームズ側からしたら「いやいや、曲がった火掻き棒を使えるように元に戻しただけですが、何か?」という理屈だと思うのですよ(笑)

元々ホームズはボクシングの実績もあり、意外と腕っぷしは強いのです。そして闖入者をうまくいなして退出させた人をコントロールする能力、自身の腕力をそれとなく?表現する自己顕示欲、ホームズの魅力が実に自然に表現されている素晴らしいシーンだと思います!

大変脱線しましたが、話を露口さんに戻します。私はこのジェレミー・ブレッド版ホームズが日本のテレビで放映される事が決まった時の事を覚えていますが、ホームズの吹き替えがそれまで「太陽にほえろ!」で非常に好感を持っていた露口さんだち知った時「正にハマり役!」と小躍りしたのを覚えています。

そして露口さんは実にイメージ通りのホームズの吹き替えを演じてくれました。元々ジェレミー・ブレットの声はやや甲高く、逆に露口さんんはハスキーボイス。両者の声の質はかなり異なるのですね。しかし違和感は感じませんでした。

個人的にはジェレミーのちょっと演説風にも聞こえる甲高い声がホームズの雰囲気にあっているような気がします。しかし露口さんが「山さん」を演じる際に頻繁に見せていた語り掛けるような説得の口調が実のホームズにマッチしていたと思うのです。

そして、ユーモラスな場面ではどことなく柔らかくちょっととぼけたような口調になるのも露口さんのテクニックだったと思います。上の闖入者に対して、丁寧語を使用しつつ、その逆相手を明らかに小馬鹿にしている口調は見事なものでした。

本当にいい仕事をされたと思います。番組の性質からして、10年、20年、いや100年後もどこかでこのホームズの放送はされていると思います。晩年は仕事を選んで受けている感があった露口さん、このホームズシリーズは氏の芸能人生において納得できる仕事だったのではないでしょうか?

露口茂さんのご冥福を心よりお祈り申しあげます。

#露口茂

#シャーロック・ホームズの冒険

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#ジェレミー・ブレット

#The adventures of Sherlock Holmes

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