「あなた」「君」「おまえ」ジュリーは女性をどう呼んだのか?

こんにちは、みやけです。

今回は沢田研二さんの話です。ジュリーの楽曲の相手に対する”呼称”という事をテーマに分析していきたいと思います。

具体的に言いますとですね、ジュリーの歌(というか歌謡曲の大半)には対象となる異性の相手が存在し、その呼称(男性側からの呼び方)が「あなた」であったり「君」であったりで「おまえ」あったりする訳です。特にジュリーの場合、それが曲によってどう呼ぶのか?そしてそのワードが曲全体の印象にどう影響しているのか?ジュリーを売り出すコンセプトに沿ってなのか?そのあたりが昔から非常に気になっていたのですよ。

今回はシングル曲に絞って、その歌詞の中で相手の女性をどう呼んでいるのか?更に上記以外のパターンがあるか?検証してみようというものなのです。それぞれのパターンで印象深い曲がありますし、根っこの部分から分析しようと思ったらアルバム曲すべてを手掛ける必要があると思いますが、時間の関係もあり、今回はシングルのみです。ただし、曲の詞の部分をすべてチェックしております。

「ジュリーをどう売り出そうとしていたのか?」を考察するとしたらシングル曲に絞った方が良かったのかも知れません。それでは結果をご覧ください。

結果は「あなた」20曲、「おまえ」18曲、「君」20曲、そして「無し」20曲となりました。ここまで数値が近いとは思いませんでした!更に「あの娘」「あんた」が各1曲、となった訳です。普通に見れば、いわゆる”全盛時”は「あなた」であり、独立前~後期が「おまえ」還暦~以降が「君」もしくは「無し」の流れかな?とも見えます。

ではそれぞれのパターンについて分析したいと思います。

◎ その他 について

まず「その他」というのは特に記載がないパターンです。これには2つのパターンがあると思いました。ひとつは対象の異性の相手がいるにはいるが、作詞側が曲自体ののメッセージを伝えるのを重要視した為、対象相手について距離を置いている、もしくは対象の相手はがまだ遠い存在であると思わせるために「女」というちょっと堅い感じの表現にしている場合です。「さよならをいう気もない」「OH!ギャル」「背中まで45分」あたりがそうだと思います。

もうひとつは、曲そのものがジュリーの人生観・世界観のメッセージであり、対象相手そのものが存在しない場合です。「STEPIIN STONE」近年の「ロックンロールマーチ」「LUCKY」等でしょうか。必然的にジュリー作詞の歌が多くなりますね。

そして注意が必要なのが「カサブランカダンディ」!一見「あんた」と対象の人を呼んでいるように思いがちですが、(「あんたの時代はよかった」)この対象の相手はハンフリー・ボガード。ボガードを指して「あなたの時代は良かったよね?」と言っているのでこれは当然「無し」に分類すべき曲ですね(笑)しかしこの曲は対象の具体的女性がいるのかどうか微妙なんですよね。。。別途「CHANCE」のあんたもある訳ですが、それは後ほど。。。

◎ 「あなた」について

あくまで私個人の感想ですが、相手の女性を「あなた」と表現する際、その人を男性側が追いかける立場、もしくは相手が年上であり馴れ馴れしく呼びかけられない場合が多い様な気がします。ですので当然(作詞でジュリーとの疑似恋愛を楽しんでいた?)安井かずみさん作詞の曲が多くなる!

まあ、それはそうとして、若き日のジュリーが女性に対して悲しくすがるような表情で「あなた」と呼ぶのはとても色っぽくハマっているなあ、と思う訳です。個人的には「白い部屋」と「時の過ぎゆくままに」の「あなた」が非常に印象深いです。

その逆「憎みきれない」や「ダーリング」のようなアップテンポの曲にもしっかり「あなた」が印象深いんですよね。ただし阿久悠~大野克夫路線がいったん終わった後はガラッと「おまえ」路線に切り替わっているのは興味深いです。

「麗人」「女神」も阿久さんですし。(6番目は三浦徳子さん)そんな中、急に復活して以降シングルでは最後の「あなた」となった「そのキスが欲しい」は何か異質に見えます。この曲の作詞は朝水彼方さん。曲のクオリティは非常に高く当時の時代感にもマッチしていたはずなのになぜかそれまでと売り上げが大差なかったこの曲、、、ポツンと急に「あなた」が登場しているのもなにかの因縁なのでしょうか?

「あなた」はジュリーがトップスターに駆け上がっていく段階での呼称として非常にタイムリーな呼称だったと思いますよ。

◎ 「おまえ」について

追い求める対象の女性を大々的に「おまえ」と呼ぶことは、今では中々厳しい表現なのかも知れません。凄く偉そうですし。ただし見方を変えれば、歌詞の中でこのワードを使用している場合、男性と女性は対等な立場であり、楽しみながら心理的な駆け引きを行っているようにも見えます。

ジュリーの楽曲から言えば、「恋は邪魔もの」を皮切りに「追憶」「勝手にしやがれ」「サムライ」「TOKIO」と続く訳なので大ヒットにつながっているパターンが多い様にも思えます。ジュリーが年齢を重ねるにつれ、付き合う女性に対し「おまえ」と呼ぶ状況が様になってきた、とうことなのでしょうか?

ただしかし、この呼び方は言い方によっては冷たい感じにも聞こえてしまうのですが、ジュリーが歌うとそのセリフの中に相手に対する秘めた愛しさが含まれているようにも思うのです。これはジュリーの歌唱力のなせる業だと思いますね。「サムライ」「おまえがパラダイス」なんかは特にそう思います。

時系列的に見ると、「おまえ」は”新路線”とも言うべき「ロンリーウルフ」から一気に加速し、「灰とダイヤモンド」に至るまで連発していますね。4年近くシングル曲の大半が「おまえ」だったわけです。

他の歌手と比較して申し訳ないですが、他のアイドル歌手、、、秀樹やマッチにも相手を「おまえ」と呼ぶ歌は多々ありますが、私的にはなんだか軽い印象があります。そして演歌は非常に多いとは思いますが、このおまえはなんか重々しすぎるというか、恋愛とはちょっと違うような。。。。

ジュリーが歌謡曲界のNO1として君臨した1970代後半~80年代前半はこの「おまえ」というワードを大胆に駆使して自身のイメージ(女性を煙に巻く妖艶なジュリー)の拡散に成功した、」と言ってもいいのかなと感じます。

◎ 「君」について

ご承知かと思いますが、ジュリーのデビュー曲は「君をのせて」ですので、相手を君と呼ぶのはジュリーの原点なのかもれません。しかし特定の女性に対して「君」という表現はこれまた一見覚めている、というか冷たい感じにも聞こえるかも知れません。

しかしジュリーの「君」のラインナップを見てみると「ヤマトより愛をこめて」「きわどい季節」「SPLEEN」「そっと口づけを」といった非常に印象深いバラードの名曲が多いのですね。逆に「ポラロイドGIRL」「愛まで待てない」「サーモスタットな夏」といったロックテイスト溢れライブで大盛り上がり必須の曲も多い!

この傾向について色々考えてみたのですが、私の見解としては「その曲においての男女の関係を深読みするのではなく、曲全体から発するメッセージの方を汲み取ってほしい。その為相手は敢えてぼやけて堅苦しい感になるように”君”という表現を用いた」そう考えました。

「ヤマト」「TRUE BLUE」「SPLEEN」「来タルベキ」「忘却」「そっと口づけ」なんかは非常にメッセージ性が強い歌ですからね。その結果、非常に心に残る歌が多くなっている。「君をのせて」「きわどい」「TRUE BLUE」「SPLEEN」「永遠に」(更には君だけに愛を!)は最初の歌詞が「君」から始まり非常に印象的ですね!

ジュリーの歌詞で「君」が使用されている場合、何か特別な意味がある。そう思いたくもなりますね。

それでは、補足を書いておきます。まず英語で歌っている「FUGITIVE」および「MEMORIES」については、訳せば「あなた」なり「君」「おまえ」に合致する歌詞が出てくるのかもしれませんが、流石に訳すまでは出来なかった!とりあえず「その他」扱いにしています。申し訳ない!

そしてジュリーの楽曲至上、異色中の異色曲である「晴れのちBLUE BOY」。この曲の中では間違いなく対象となる女性はいるのですが、既に別れて立ち去られた後であり直接語り返ることは出来ていない、ザックリ言えば「愚痴りまくる」事がこの歌の趣旨なのですが、その中で相手をサラッと「あの娘は出てってく、、」と表現しています。この曲ならではですね。

そして「CHANCE」です。この曲においては一見対象となる女性はいないように思えます。歌の内容としては「時流に乗れず何をやってもうまくいかない自分自身を憂う歌」ですが、その中で「自分に必要なのは”チャンス”だ」として、そのチャンスを「あんた」と呼んでいるわけです。

ではこれは「カサブランカダンディ」と同じ「その他」のカテゴリに入れるべき、、、、最初はそう考えました。しかしなんどもこの歌詞を吟味・見返していくと別の考えに至りました。ジュリーが「あんた」と呼んでいるのは実体のない「チャンス」という”機会”な訳です。

金曜日の夜がはじまりまた俺は一人になった。着飾ったショウウインドウに横目でウインク、ついてないのさ。

地下鉄から駆け上がる顔、高級車乗り回す顔、ふと思う逆の立場を。どこで自分は間違えたのか?

時は夢を見せて、ワインだけ躍らせる。いつも一緒によって、OH!マイガール、身を引く罰当たり。

俺のボスはチャンスあんたなのさ、今にうまくいくと彼女を待たせている。俺のボスはチャンスあんただけさ、愛は言葉じゃない、手にダイヤモンド!

お人好しの仮面に隠れ、今以上遠くを見てる。この場所と今の時代が悪いだけだと言い聞かせて。風は同じなのに天と地を決めるのか?こんなはずじゃないのに、逆らう罰当たり。

俺のボスはチャンスあんたなのさ、誰も見たことない扉に立たせてくれ。俺のボスはチャンスあんただけさ、古い愛され方彼女は知らない。

しかしジュリーが本当に声をかけたかったのは、その裏にある特定の人物、、、それが恋愛対象の女性なのか?仕事仲間なのか?ジュリーより上の立場の者なのか?そこまでは解明できなかったのですが、一見人生論を語っている歌のように見えて、サビの部分の強いワードの連続を見るにつけ「今の自分はあなたのせいでこのような立場に追い込まれている」という事を言いたかったのでは?という結論に達したのです!なので「あんた」は実在している!と。

ちょっと苦しい理論ですかね?でもこのチャンスもまた奥深い歌詞の曲です。最後に出てくる「彼女」というのは「チャンス」と解していいのか?歌ったみるととんでもなくキーが高いし。。。。

そしてですね。この調査は歌詞を網羅しているとはいえ、ジュリーのシングル曲のみに限った話な訳です。ジュリーの全てを理解しようとするなら、およそ800曲強あるジュリーの歌の全てをチェックすべきかもしれませんが、流石にそれは無理かと。。。。

しかし、ソロでのアルバム曲をすべてチェックし、「曲タイトルに呼称が含まれているもの」はチェックできました。それが以下の内容になります。更には!この回のUP直前、「詞の中に呼称が含まれているものも分かる限り抜き出してみよう!」と考えました。「+歌詞 →」としているものがそれなのですが、、、頭の中で30分程度で考えたものですのでおそらく2割程度しか拾えてないと思います。機会があれば本格的に調べたいのですが、今回はこの程度です。

あなた~計4曲

「あなたに今夜はワインをふりかけ」「あなたにはかなわない」「あなたを想う以外には」「あなたでよかった」

+歌詞 →「思い切り気障な人生」「お嬢さんお手上げだ」「素肌に星を散りばめて」「パフューム」「はるかに遠い夢」「私生活のない女」「静かなまぼろし」「すべてはこの夜に」「僕は歌うよ」

おまえ~7曲

「お前なら」「気になるお前」「俺とお前」「お前は魔法使い」「おまえのハートは札付きだ」「おまえがパラダイス」「おまえにチェックイン」

+歌詞 →「ナイフをとれよ(男性?)」「KNOCK TURN」「コインに任せて」「PRETENDER」「アンドロメダ」「世紀末ブルース」「そばにいたい」「PAPER DREAM」「STOP WEDDING BELL」「氷づめのHONEY」「ナンセンス」「ミラーボールドリーマー」「デモンストレーションAir Line」「噂のモニター」。。。

君~11曲

「君を許す」「君をさがして」「君が泣くのを見た」「君がいる窓」「君の憂鬱さえも愛してる」「君をいま抱かせてくれ」「君が嫁いだ景色」「いつか君は」「君にだけの感情(第六感)」「君のキレイのために」「君の笑顔が最高」

+歌詞 →「夢を語れる相手がいれば」「バイバイジェラシー」「想い出のアニー・ローリー」「8月のリグレット」「News」「Darling」「透明な孔雀」「堕天使の羽音」「abc…I love you」「不安にさせよう」「むくわれない水曜日」「僕は泣く」「いい風よ吹け」「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」「夢の日常」「グランドクロス」「無事でありますよう」「生きてる実感」「海に還るべき・だろう」「アルシオネ」「涙のhappy new year」「AZAYAKANI」「あの娘にご用心」「生きてたらシアワセ」「ホームページLOVE」。。。

一気に「君」の表記曲が増えましたし、しかもライブでも大人気の名曲が多い!やはりジュリーの歌の本質は「君」なのでは?と結論づけたいと思います。

そして、当然の考えとして、「ではジュリーは自分自身をどう表現していたのか?」という疑問が直ぐに浮かんでくる訳です。ない場合が多いとは思いますが、あるとしたなら基本は「僕」ですかね「危険なふたり」「ダーリング」「LOVE」「6番目」「晴れのちBLUEBOY」「SPLEEN」。。。次は「俺」ですか?「ストリッパー」以外あまり浮かんでこない、、、かなり飛んで「俺たち最高」?あ、「きめてやる今夜」「あんじょうやりや」があるか!「私」って曲あったっけ?

まあ、機会があれば「自分自身編」も書いてみたいと思います。

そして思ったのは、私はジュリーのほかにも野口五郎さん、西城秀樹さん、ウルフルズ、岡村靖幸さん、SMAP等常日頃から楽曲を聞いている男性ミュージシャンは多々いるのですが、このような分析をしたいと思ったのはジュリーだけですね。何かこう、「あなた」「おまえ」「君」それぞれのジュリーの世界を曲ごとに完璧に表現しているのは本当に素晴らしいと思います。

それからこの調査は一式、目視・手入力で行いましたので、色々な間違い・漏れがあるかと思います。恐縮ですが、何かございましたらご指摘いただけますでしょうか?その都度確認の上更新させていただきます。

それでは、また。

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