能登半島地震 私の物流論

こんにちは、みやけです。

事実上今年最初の回ですが、元々は私なりのプロレス論を述べる事を予定しており、少しその序盤を書きかけていました。かなり掘り下げる内容で力の入れようとしていたのですが、1日に発生した能登半島地震についてどうしても書きたいことがあったでの予定を変更。プロレスの話は次回に伸ばしたいと思います。

今回の能登半島地震、私なりに被災者の気持ちに寄り添っているつもりですし、家屋倒壊・生き埋め等のニュースを耳にすると、どうか少しでもいい方向に向かうよう願わずにはいられません。しかしニュースやSNSを見ているとどうにもこうにも耳障りなニュースが入ってきます。

石川県からの要請を聞きもせず現地に入る事自称ボランティア・ユーチューバー。更には政府・自治体・支援組織に対する批判・上げ足取り・罵声・嘲笑。。。

yahooニュースのコメント欄やXあたりは、、、見なければいい話なのですが、情報をチェックしているとその手の書き込みがどうしても目に入りますし、そして単身現地に入って物資を配ろうとする、ボランティアと称する偽善者たち、、、「動画撮影は無し、作業終了後も自分のやったことは一切口外しない事」を条件に出されたら、絶対しないくせに。。。

まずですね、日本という国は東日本大震災から熊本地震、更には幾多の大豪雨等の災害を経て物資輸送のマニュアルというのは相当に確立されており、地方の各自治体にもその点についてはそれなりに情報が共有されている。東日本震災の時はほぼ何もなかったに等しく、物資を受け取った側もそれを末端に配るにはどうしていいか分からない状況も多々ありましたが、今では訓練・教育を重ねており、相当にレベルアップしているのです。

現時点、岸田総理が台湾からの支援要請を断ったり、現地に派遣する自衛隊の人数を劇的に増やしていないのはそれなりに理由があるはずだと私は確信しています。

そもそも、今まで何も救援活動に携わった事がない人が、大規模な災害の発生しているエリアに入って何か人助けが出来る、と思える神経が分かりません。連中は何かと対処のスピードの遅さを指摘しますが、今回の状況はとりあえず行けばいいという状況ではないのです。多分単にモノを運ぶだけなんだから簡単にできる事、と決めつけているのでしょう。

都心に住んでいる人には想像がつきにくいかもしれませんが、日本海側の大きな道路というのは非常に限られていて、そこが土砂崩れしようものなら、簡単に迂回できるようなコースは無いのです。しかも今回は半島内で大きな被害が出ていますので、そこの根元の部分が詰まってしまうと車や人が押し寄せたら収拾がつかなくなることは容易に想像できます。

私は仕事柄北陸地方、特に新潟のメーカーから毎週商品を仕入れていますし(新潟には鍋や家庭用品の優秀なメーカーがたくさんあります)、そして前職では逆に福岡から北陸に向け商品を発送していたので、日本海側の交通事情はそれなりに分かっています。更に自身のサラリーマン人生の多くを物流に携わってきたので簡単に「ドローンを使えばいいのに」とか「ヘリを飛ばせば」等と浅はかな知識であーだこーだと実際に携わっている人をぼろくそに言う輩に一言言いたくて仕方がないのです。

物流というのは軽視されがちですが非常に奥が深い分野です。「なぜおまえは専門家のごとく物流について偉そうに語るのか?」と思われるかもしれません。言い訳じみているかもしれませんが、私の身の上をちょっと語らせてもらいます。

私は大学を卒業して以来今に至るまでずっとサラリーマン生活を送っていますが、最初は営業をやっておりました。人懐っこい性格とは程遠いので、全く性に合っておらず、失敗続きの毎日でした。そして30歳を迎える前後で休日に車を運転中人身事故を起こし免許取り消しになってしまったのです。

免許は1年半後には改めて取り直しましたが、当時担当していた会社の営業は車で地方を泊りで回るスタイルだったので無免許ではとても務まるものではありません、ほどなく営業は外され手薄だったな倉庫管理業務に回りました。責任者として30人くらいいた自社倉庫で勤務するピッキングのパートさんを管理し、商品発注も行いました。

その会社は問屋でしたので在庫を持つのを嫌い、商品発注すると即仕入先別に振り分けて発送するのを常としていましたので、荷物の到着が遅れたり揃わない事にいつもピリピリしていました。運送会社といろいろやり合ううちに、おぼろげながら物流という業界の特性が分かり始めました。

正直物流という業界は、大手の数社が業界全体をコントロールしており変革を嫌い、旧態依然とした状況を中々脱却できません。しかもそれを託す企業についてもは物流については「余計な経費」としか認識されてらずそこに改善のメスを入れるという行動は中々とれませんでした。

しかし営業も物流もやった私からすれば、モノを売って利益を前年比100万アップするより、物流に工夫を加え経費を100万下げるほうが遥かに容易であるといつも実感してきました。近年ドライバー不足により物流の効率化がようやく一般の人が考えるようになりましたが、私からすれば「ようやくか」という感じです。

前職の会社はかなりブラックであり人手不足でもありましたので私は荷受け及び発送についてどうすれば突発的な作業を防ぎ効率的に物を動かせるか?頭をフル回転させていました。結論としては事前に情報を掴みその情報から起こりうる結果を想定して何パターンが対応策を決めておくとかなり対応がスムーズになることを実感しました。

例を挙げると、商品を発送した側は「✖✖着で送った」と連絡さえすればもうそれで自分の責任は果たした、と思い込みがちですが、受ける側とすればこれからが本番です。というか発送側の原価には負担する配送料も含まれていますから商品が確実に到着するまでは責任を持つ必要があると思います。それでも荷物が割れたり延着したりしても「ウチはちゃんと送っていますから」という業者は多々ありますね。。

荷物を受け取ってそれを基に作業する側はそれに合わせて人員配置していますから、荷物が来ないとなるとその人員は何もすることが無くなります。物量が多くなればなるほど片手間でやれる作業ではなくなりますので、その荷物が間違いなく到着するか、遅れたとしてもいつになるか?の判断がとても重要になるのです。遅れたら遅れたで対応する内容は常に想定しておかねばなりません。

特にその商品が「チラシの目玉商品」だったとしたらどうのこうの言っている暇はなく最優先で対処する事になります。その手の商品に限って営業は「生産即出荷」みたいな危なげなスケジュールで商談をまとめてくるものなんですよ。。。

しかし前職ではあまりに待遇が悪かったので私は16年勤めて退社しました。そして半年の求職期間の後今の会社(チェーン店展開の小売店)の「物流責任者募集」のスカウトがあり、運よく採用に至りました。ちょうど物流専門部署を立ち上げたばかりであり、前職とも取引があったので私の存在は「どこの馬の骨かわからない」者ではなかったのがポイントだったのでしょう。

入社後すぐに物流の責任者として働き始めたのですが、それもつかの間、1年もしないうちに東日本大震災が発生しました。取引先にはそれほど大きな影響はなかったのですが自治体より支援物資の発送の要請があり対応する事になりました。

そういう対応はうちの会社では初めてだったようです。もし物流専門部署がなければ各店舗からバラバラに現地に発送せざるを得ず。収拾がつかなくなっていたでしょう。要請はおむつやティッシュ、等の消耗品・生活必需品で、原価は自治体が支払いトラックも向こうが手配してウチの会社の物流センターに集荷に来る、との事でした。

ちなみに社長から飛んできた指示メール、転送、さらに転送された発信元は当時の災害対応責任者であった、今は亡くなられた悪名高きあの方でした。架空動物が名前に入る、、、。社長の指示としては、各店舗に発送すべき商品名・数量を通達しているから、それを物流センターに集約し、数が正確かチェックし、種類ごとにまとめて梱包し、外側にマジックでその段ボールの中身が何なのか記載し、集荷に来たトラックに載せてほしい、とのことでした。

仕分け・梱包についての対応は私の部署ではなく、通常業務を委託している●●物流という会社が行ったので作業の負担はなかったのですが、数量チェック管理は苦労しました。アイテム数としては10くらいでそう多くはないのですが、店舗は日々の作業を行いながらバタバタ緊急で作業するのでどうしても数の入れ間違いがあるのです。

うちの会社の店舗数は数10店舗あるのですが、その全店舗分の荷物についてそれが正しい数を送られているかチェックしなければなりません。受け側の東北の自治体がその数量をチェックするとは思えませんが、送る側は無償提供ではなくお金をもらって発送するのでやはり適当な数量で送ることは出来ないのですね。

当初抜き打ちで数量をチェックしていると、数量間違いが多々ある事に気づきました。仕分け作業の翌朝にはトラックが来ますので後追い発送は間に合いません。社長にその事を報告すると、「やはり正しい数量を確定すべきだ」という事になり、全部の荷物の数量チェックを委託業者に依頼しました。私も手伝いました。

委託業者の作業も通常業務を終えてからになりますので、17時頃から当日夜中の23時ころまでになりました。梱包が終了したのを見届けいったん帰宅し、翌朝9時に集荷のトラックの積み込みに立ち会いました。トラックはチャーターであり、ドライバーはそのまま東北に走る、との事でした。

その日は震災から1週間程度経過していたのですが、既に現地の悲惨な状況は伝わっていましたので「この商品が被災者の方々の少しでもお役に立てれば」と物流センターから立ち去るトラックを見ながら願わずにはいられませんでした。

結局のところ、商品の不足・過剰が多々見られたので、自治体には依頼数量とは異なる実際の数量(数ps単位ですが)を報告し、双方合意の元実際の数量の請求書を作成したようです。実質2日程度の対応でしたが、自分なりに支援活動にちょっとだけ貢献できたのではという自負はあるとともに、色々と想定外の事が起きるものだと実感しました。

数年後熊本地震が起きました。この時は非常に近いエリアで起こった災害だったので何パターンに渡っての支援発送・手配があったのですが、その際は前回の経験を活かし向こうの担当者との打ち合わせでは色々と提案しながらよりベターな方法を見つけることが出来ました。

向こうの担当者は専門家でも何でもなく、たまたま窓口に指名されてしまった人のようで、こちらから「トラックを向かわせるにしても現地の指定箇所まで入っていける道路はあるのか?」「現地で荷下ろしの際必要なリフトもしくは立ち合いの人はいるのか?」「輸送途中渋滞等で予定の変更を迫られた際、対処法の決定権を持つ人の連絡先」等、こちらから提案すると、「それを事前に言ってもらってよかった」という感じで練り直した答えが返ってきました。

その後、幾多の災害に対応する度に出てくる窓口の方とのやりとりが非常にスムーズに行われるようになりました。おそらく各自治体内部での教育やマニュアルが段々と練り上げられていっているのだな、と思わずにはいられませんでした。

物流という事については「ただモノを運ぶだけでしょ?」と軽視されがちだといつも感じています。20年くらい前までは成績を落とした営業マンが、「会社クビになったら佐川の運ちゃんなって長距離は走ればいいか!」と嘯ぶく人をたくさん見てきました。

どうして運送業なら自分は即戦力であり、入ってすぐモノになると思っているのか不思議でしょうがありませんでした。もっとも運送業のドライバーも今では決して無条件で高級を取れる職業ではなくなりましたが。。。

今回、馳石川知事が善意でも訪問は控えるよう再三アナウンスしているのに現地入りを強行する、ユーチューバー、自称ボランティア、政治家と自称する活動家。。。。彼らは実行した結果自分の都合のいい部分だけ切り取って吹聴するのでしょうけど、どれだけ現地の活動の妨げになったかは気づきもしないのでしょう。

私は物流=ロジスティクスというものは計画を立て、その途中突発的な事象が発生すればその都度最もベターな対処を取り、最初の計画通りに事を完結させるものだと思っています。今回のように思い付きで行動している輩が、被災者を利用して自身の承認欲求を満たしているのを見ると腹が立って仕方がないです。

今回の災害において心を打たれ、なんとかして支援したいという気持ちは分かりますが、実際の行動はプロに任せるべきなんです。マスコミも何か不具合が合ったニュースばかり取り上げますが、コツコツと地道に取り組む作業はあまり取り上げてくれません。

現実に生き埋めになったままの状態の人をどうでもいいと思っている訳ではありません。でも確実に救助活動は進んでいるのです。そして予期せぬことが起こったとしても傍観者にはどうしようもないのです。

そしてこの状況下で、自分をアピールしたい人間、他者を批判するのに震災を利用したい人間がいる事をしっかり見極める必要があると思います。

今日はこんなところです。それでは、また。

#能登半島地震

#東日本大震災

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